埼玉大学理学部生態制御学科 遺伝子学研究室

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研究内容

研究テーマ

1.なぜアカパンカビで研究するのか?

がんをはじめさまざまな病気、そして老化などは、遺伝子の異常によって起こるものが多く知られており、複雑な遺伝子の相互作用が考えられています。その機構を研究することはとても重要ですが、ヒトを実験材料とするには倫理的な制約が多く、その研究を困難にしています。例えば生物の恒常性、個体性を維持する仕組みにおいて、基本的な遺伝子構成は、細菌からヒトに至るまで、ほとんどが共通に存在します。当研究室では、真核生物のアカパンカビをモデル生物として研究を行っています。アカパンカビは、大腸菌などの原核生物や、単細胞の菌類である酵母などと比べて、よりヒトに近いと考えられ、かつ倫理的な制約を受けない為に、生命現象についての基礎的知見を提供することができます。

2.遺伝学的研究材料としての特性

アカパンカビは、BeadleとTatumが「一遺伝子一酵素仮説」を導きだす際に用いた生物です。その鍵となったのが、生活環のほとんどを「半数体」で過ごすという利点です。すなわち、ヒトや昆虫、そして植物のように、体細胞に両親に由来する2組の遺伝子セットを持つのに対して、このカビは1組の遺伝子のセットしか持ちません。そのため、ある遺伝子に突然変異が生じた場合、その遺伝子の機能の欠損が直接その個体の特徴となって反映されます。また、アカパンカビは「交雑」が容易であり、世代時間も約3週間であるため、様々な遺伝子の変異の組み合わせを持った子孫を簡単に作ることができます。これにより色々な遺伝子の相互作用を解析する遺伝学的な研究における優れたモデル生物であると言えます。

3.DNA修復機構、寿命

私たちのDNAは、太陽光の紫外線や自らの呼吸により生じる酸化物、そしてDNAの複製の誤りなどによって、いつも遺伝情報が変化する危機にさらされています。変化が抑えられなければ、遺伝は成り立ちません。我々は、DNAの傷(DNA損傷)とこれを直す仕組み(DNA修復)、傷を見つけたらまず細胞分裂を止める仕組み(損傷チェックポイント)、異常な遺伝情報を持った細胞を取り除く仕組み(アポトーシス)とそれらの関係を調べています。

また、「寿命」についての研究も重要なテーマとなっています。野生型のアカパンカビは通常1年以上菌糸の伸長を続けます。ところが、いくつかの突然変異株は菌糸成長を1ヶ月以内に停止してしまいます。これらの変異株の特徴を解明することにより、短寿命とミトコンドリアの機能欠損がリンクしていることが分かってきました。これらの遺伝子の変異とヒトのミトコンドリア病との関係について興味が持たれます。

4.高効率遺伝子ターゲティング法の開発

細胞にDNA断片を導入すると、ほとんどが染色体のランダムな場所に組み込まれます。また、マーカー遺伝子(薬剤耐性遺伝子等)に導入したい標的領域のDNA配列 (相同配列) を付加させることで、目的の配列が低い確率で置換わることが知られていました(遺伝子ターゲッティング)。当研究室の前教授の井上らは、DNA修復機構の解析で得られた知見を基にして、遺伝子ターゲッティング効率の上昇を試みました。その結果二本鎖切断修復機構の一つ、非相同末端結合が欠損した株を用いることで、遺伝子ターゲッティング効率が飛躍的に上昇する現象を発見しました。この知見は、真核生物の高効率な変異体の作製や、遺伝情報の改変を可能にし、遺伝子の機能解析に革新をもたらしました。

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